かえりみち


夕焼けが、辺り一面をオレンジ色に染めている。

古ぼけた小さな個人病院を出て行く、子どもとその母親。
ピンク色のナース服を身に着けた百合が、それを見送る。

「お大事に」

ふぅ。
今日の診察は、これで終わり。

あ、洗濯物、入れないと。
今日は一日天気が良かったから、気持ちよく乾いてるだろうな。

裏庭の物干しに、風に静かに揺れるシーツ。
百合が見上げると、そのてっぺんに赤とんぼが止まっている。

その先に、高く澄み切った空。
明日もきっと、天気だ。

空は一つにつながっている。
タクの上の空も、同じように晴れてる。
そんな気がした。

百合がにっこり微笑んだ。

シーツに手をかけると、赤とんぼが空へ向けて高く飛んでいく。


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