かえりみち
空から赤とんぼが降りてきて・・・
チェロケースに止った。
誰かに呼ばれたような気がして、幸一が足を止めて振り向いた。
「・・・」
幸一の家に続く石段の、ちょうど真ん中。
斜面にはコスモスが、一面に咲き乱れている。
幸一は石段に腰を下ろした。
コスモスの海の中に埋もれる幸一。
あの子は、ちょうどこの辺に腰掛けて、僕の帰りを待っていてくれたな。
今度は、僕が待つ番だ。
頬杖をつく幸一の顔を、夕日が優しく包んでいる。