かえりみち
玄関のドアを開ける幸一と由紀子。
そこに、大人になった歩が立っている。
胸に鍵をぶら下げて。
無言のまま、しばらく見つめ合う三人。
やがて幸一が微笑む。
続いて由紀子も。
ずっとずっと言いたくて。
心の中で暖めていた一言を、ゆっくりと言った。
「おかえり。」
歩の顔いっぱいに、笑顔が広がる。
「ただいま!」
歩が後ろ手に持っていたものを差し出した。
コスモスの素朴な、しかし心のこもった花束。
幸一と由紀子が駆け寄って、歩はその胸の中に飛び込んでいき・・・
二つの影が、暖かなオレンジ色の明かりの中で一つに重なって、
もう二度と、離れることはなかった。
【完】


