かえりみち
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あぁ、たまらん。
退屈な演奏だ。

早乙女は机に肘をつき、欠伸をこらえていた。

おい、小林くん。
私ががんばっているのに、隣で寝てるんじゃないよ。

なんでこの私が、こんな落ちこぼれみたいな学生の相手をしなければならないのか。
本当なら私が島田幸一の方につくはずだったのに。

うーん、本当に退屈だ。
下手くそだし。

早乙女は、ステージで棒のように突っ立ってバイオリンを弾いている生徒に失望の表情を浮かべた。

この高伊音楽院は、音楽家を目指す国内の最高峰の学生が集まって研鑽を積んでいる・・・はずである。
それなのに、たまーにこういう、なんでここに入れたのか分からないような学生がいるのだ。

この生徒はまだいい。
弾けるだけましだ。

問題は次の生徒だ・・・。

早乙女の眉間の間のしわが、また一層深くなった。

「はい次。葛西卓也」

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