Memory's Piece
「・・・・気持ち悪・・」
過去のフラッシュバックに振り回されて掻き回されたボクはやっとたどり着いた安らげる場所にバタリと倒れ込んだ。
爽やかな風が駆け抜ける『ここ』は何処よりも安全で安心できる場所。
広がる香りは柔らかな桃の香り。
さわさわと体を揺らす草に埋もれて丸くなるボクはそれがやって来るのを待っていた。
ただ、名前をその優しい声で呼んで欲しくて。
「みーちゃん?」
期待していた声に名前を呼ばれ、ボクはピクリと耳を震わせた。
少しの困惑と沢山の嬉しさを含んだ透き通って澄んだ甘い声。
返事をせずに丸まったまま尻尾を一振りしてみせると、彼女はふわりと微笑む気配をその身に纏う。
「ここに来るのは久しぶりね」
そういって丸くなっているボクを撫でるのはただ一人のボクの肉親。桃亜姉だ。
桃色の髪を風に靡かせながらボクの近くによいしょと座った桃亜姉は、ボクの髪についた草を取りながら優しく問いかけてくる。
「うーさんは?」
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