Memory's Piece
「サナちゃんに、お願いがあるの」
『サナが応えられるぐらいのことなら聞くよ』
言葉を選びながら彼女は強張った顔のままそう言う。
彼女は優しくて意地悪。
私のお願いが分かってるはずなのに聞こうと努力してくれている。
葛藤して苦しんで。でも、私を気遣ってくれる。
みーちゃんに何処か似ている強い子。
だから私は、少し我が儘を言いたくなるの。
全力の我が儘は彼女を苦しめる。
だからほんの少しだけ。
「先に、行ってて・・・?」
「え・・・・・・?」
本当は帰りたくない。
でも帰らなきゃいけない。
二律背反。矛盾。
やらなきゃいけないこととやりたいことが真っ向から対立して私の胸とサナちゃんを苦しめる。
でもいま帰れば、みーちゃんがボロボロになっていくのをまた何もできずに見ることしか出来なくってしまうから。
だから少しだけ融通を・・・・。
もう少しだけ時間が欲しい・・・。
そう願う私に、彼女は困惑を更に深くした。
多分「戻りたくない」と私が言うと思っていたはずだから。
私もそう言いたい。
でも言えなかった。
彼女も私と同じ。
大切な人と一緒にいたいだけだと知っているから言えない。
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