Memory's Piece

「波狼さん、・・・・あのデカイ猫って魅稀っすか?」


「ん?あぁ。魅稀だよ。魅稀、」


「話していいのか」と目配せしてくる波狼に肩を竦めてみせ、ボクはヒョイッとベッドから飛び降り、頼兎の前に進み出た。


「・・・虎みたいなデカさの三毛猫・・・・・?」


「ん、まぁ、その認識は正しいだろうな。」


ボクの体を撫でまわす頼兎は不思議なものをみる様な目つきでボクを検分する。

前足を裏返して肉球に触れてみたり、尻尾を掴んでみたり、耳を引っ張ってみたりとされる側としてはあまり嬉しくないいじくりかたをした後、頼兎は「なぁなぁ」とボクに話し掛けてきた。

猫の喉の構造で人の言葉は話せないんだけど・・・・と苦笑しつつボクは「何?」と言わんばかりに頼兎の目を見た。

頼兎はしみじみとした顔で


「この格好の時に雄猫・・・・いや、デカさ的には虎か?とやらかしたらどんな生き物が生まれる訳?」


と真剣な顔つきでボクの瞳を見つめながら、顔を赤くもせずに問い掛けてきた。

爪一線。

頼兎の腕に爪を閃かせてボクはピョンッと後方に飛びのいた。

もし、人の言葉が喋れたら「死んでしまえ!!」と怒鳴り付けていたのに。

ボクにそういう冗談は通じない。むしろ、地雷だ。

ソファーに座って大爆笑する波狼をキッと睨みつけて黙らせて、「何怒ってんだよー」とすっとぼけた文句を垂れている頼兎に「シャーッ!!」と全力で威嚇する。

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