デスゲーム
「あ、笑った。俺の勝ちな。やっぱそっちの方がいい」

「あなたがそうしろって言ったんでしょ?それに勝負なんてしてないよ」


日が暮れる。どうしてだろう?付き合ってもいないのに、いつまでもこうしていたい。心は嘘をつかない、か。


「日も暮れてきたし帰ろうかな。今日はこれでお終い」


躊躇しつつ立ち上がると、沙弥も渋々と腕を解いてくれた。


「帰り道気をつけてね。またトラブルに巻き込まれないように」

「そうならないように祈るわ。白玉帰るぞ」

「ニャン♪」


雑草とじゃれあう白玉に声かけるとすぐ側に寄ってきた。やっぱ頭いいのかな?


「じゃ、また明日ね。白樺公園で待ってるから」

「ああ、了解。……最後に沙弥の笑顔が見たいんだけどな」


沙弥に背を向けたまま、わざと聞こえるように声を張る。


「隼人!!」

「ん?」

「これでいいんでしょ!?」


振り向くといつもの笑顔があった。どうやら大丈夫そうだな。これで安心できる。


「ありがと。じゃあな!」


日は沈んでいるが、空は紅かった。そんな空のもと白玉を抱いて歩く。冬へとむかう、冷たい秋風が身を包む夕暮れだった。
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