微温湯〜ぬるまゆ〜

もう何年前だろう。
私が藤井君のことを、自分にとって特別な人間だと決めたのは。


知り合った時から、尊敬できる先輩だったと思う。
それは決して恋心ではなく、父や兄に甘えるのと似た感覚。

16才になったばかりで出会ったから、もう10年以上。恋や勉強の相談はしたことがないけど、一社会人として生きるためにぶつかる壁は、いつも彼に助言をもらって越えた。

彼は頭が良かった。
高校自体が進学校で、落ちこぼれ気味だった私にとって、周りの人は大体がキレ者。
その中でも彼が特別だったのは、頭がいいだけでなく、学生全体をまとめられる求心力があったし、勉強だけでなく遊びも上手だったからだ。

そんなにハンサムではないけれど、長身で、キレモノなのに、私が知り合った時は彼女がいなかった。知らなかっただけかもしれないけど。
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