―White Memory―
今起こった出来事を理解するには、あまりに一瞬だった。
でも、唇に触れた温もりは確かに感じていて。
「堀口く…、」
「クスはズルイな。」
「え…?」
慈しむように髪、そして頬を撫でられ、抱きすくめられた瞬間
「そうゆうのは、男から言わせてよ。」
耳に届いた言葉に自分自身を、これは現実なのかと疑った。
「……堀口くん、」
灯吾の胸に埋めた耳に
彼の鼓動が聞こえて来る。
それはあたしと同じくらい、鼓動を刻んでいて。
ただ、それだけで
どうしようもなく泣きそうになった。
クリスマスに友達を選ばれた、そんな自分に存在価値が見出だせなくて。
ずっと、恋は寂しいんだと思ってた。
だけどそうじゃないんだ。
悲しい時、辛い時。
そんな時だからこそ自分を支えて欲しい、相手を支えてあげたい、そう思える恋は
きっと寂しくなんてないはずだから。
「…クス。俺は、クスを…。
聖華を、好きになってもいいですか?」
だからこそ
あたしはあなたの傍に居たい。
「…好きに、なって下さい。」
ずっと、あなたの傍に。