―White Memory―
それからは思い出してもらおうとする事を止めて、ただ話しをする為に灯吾に会いに行った。
もちろん、失くした記憶を取り戻して欲しい気持ちはあるけれど
それ以上に、灯吾が生きていられた事に感謝しようと思ったから。
「それ、いつも読んでるけど面白いの?」
「これ?うん、面白いよ。聖華さんも読んでみる?」
「え~、文字いっぱい見ると眠くなるもん。」
「あはは。まぁ、確かに眠くなるよね。」
「でしょ?」
だから、ゆっくりと
今の灯吾と向き合っていくんだ。
そうする事で
少しでも、あたしを思い出してくれたら。
少しでも、またあたしと一緒に居たいと思ってもらいたいから。
……そう、思ってるのに。
綺麗事を並べても
やっぱり寂しさは拭えなくて、一人になると泣いしまう。
灯吾の面影を抱きしめて眠る夜を、あと何度繰り返せばいいのだろう。
だけど灯吾の前では
笑顔のあたしで居たい。
灯吾にも、笑って欲しい。
――だから笑うんだよ。
心に嘘をついて、あたしは笑うの。