―White Memory―
「じゃあ、また。」
「うん。何かあったら連絡して。」
美貴の言葉に頷いて、開いたバスの扉に歩き出す。
そして車内に乗り込んだあたしは、空いた席に座り、もう一度美貴へ視線を移した。
だけど、美貴は俯いたままあたしの視線に気が付かない。
……美貴?
不思議に思っていると、音を立て、バスの扉が閉まる。
その時、ようやく美貴が顔を上げたので、あたしは笑顔を作って手を振った。
だけど、胸を過ぎった違和感は家に着いても心に留まっていて。
思い詰めたような美貴の顔が、やけに頭にちらついた。
…何かあったのかな。
――そんな違和感は
後日、望まない形で解消されることになった。
…その日は、初雪だった。
ちらちらと空を舞う雪を窓越しに見上げ、どおりで昨日から冷えたわけだ、と腕をさする。
ホットココアをカップに注いで飲むと、冷えた体に染み渡った。
カップを両手に包み
棚に飾られた写真を見つめる。
…笑ってる。
あたしも、灯吾も。
それを見ていたら無償に灯吾に会いたくなって、あたしは身支度もそこそこに家を飛び出した。
二人の思い出を抱えて。