―White Memory―
…え―――?
突然飛び出した自分の名前に、ぎゅっと胸の奥が縮まった。
あたしがここに居るなんて思ってもない美貴は、感情を露わにしたように声をあげる。
「あたしだって、灯吾くんのことが心配なんだよ?」
「…どうしたの、美貴ちゃ、」
「灯吾くんは何もわかってないんだね。」
――そして。
「あたしだって、ずっと灯吾くんのこと―――っ。」
目の前が真っ白になる。
まるで、後ろから頭を殴られたような衝撃。
気が付けば、あたしは体中が震えていた。
…美貴が、灯吾を?
嘘だ、だって…。
聞いてしまった美貴の気持ちを何とか飲み込もうとしてみるけれど、それは無理だった。
「あら、楠原さん。今日も彼氏のお見舞い?」
突然掛けられた声に、ビクッと肩が跳ね上がる。
振り返ると、いつもの看護婦さんが「入らないの?」と
何の躊躇いもなく病室の扉を開けた。
止める余裕なんて、今のあたしには持ち合わせていなかった。