―White Memory―
目が、合った。
困ったような顔をした灯吾。
そして、心底驚いたようにあたしを見つめる美貴。
「……聖華…、いつからそこに、」
明らかに動揺してる美貴から灯吾へ視線を移せば、彼は俯いてあたしから目を逸らした。
その瞬間、張り詰めていた糸がプツン、と切れて。
「聖華っ!」
あたしの足は、灯吾の病室とは逆へ走り出した。
涙が零れる。
心臓が、胸の奥が、焼けるように痛い。
「聖華、待って!」
病院から外に出ると
美貴の声があたしの背中を引き止めた。
あたしは振り返ることなく、乱れた呼吸で立ち止まる。
何が起きたのか。
何であたしは逃げたのか。
…わからない。
だけど、認めたくなかったのかもしれない。
美貴が、灯吾を
好き、だったなんて―――。
「ごめん、聖華。ごめんね、あたし…っ、」
「…何で謝るの?」
あたしの言葉に
美貴が息を飲むのがわかった。
だから、あたしは
胸の痛みに気が付かれないよう、いつもと変わらない口調で告げる。
「謝ること、ないよ。」