―White Memory―
それは、多分本心だった。
あたしは、謝られる立場なんかじゃない。
記憶を失った灯吾は、今あたしの“恋人”なのかと聞かれたら、それはきっと違うと思う。
灯吾も、きっとあたしを“恋人”だと思ってないと思うから。
「謝るのはあたしの方だよ。」
「……え?」
「美貴の気持ち、ずっと気が付けなかった。」
「…そんな、」
「だから、ごめんね。」
そう言ったあたしに、美貴は涙を零して首を横に振った。
そして、何度も何度も
ごめんね、と。
そんな美貴を見て
バス停で彼女が見せた表情の意味を、ようやく理解出来た。
美貴はずっと悩んでたんだ。
自分の気持ちと
そして、あたしへの罪悪感で
ずっと―――。
「……美貴。」
呼び掛けると、美貴は涙に濡れた顔であたしを見つめた。
あたしは笑って言う。
「…灯吾のこと、美貴に任せていいかな。」
「え……?」
「あたしじゃ、灯吾を支えてあげられないから。」
「聖華…、」
これで、いいんだ。
「これからは、美貴が灯吾の傍に居てあげて。」
きっと、こうなる運命だったんだ。