―White Memory―
12月にもなると寒さは更に増して
その寂しさを埋めるようにあたしは夜な夜な遊び歩くようになった。
合コンしたり、サークルメンバーと飲んだり。
誰かと居ることで
灯吾のことを考える時間を少しでも減らしたかった。
家に帰るのは、ただ寝る為にだけ。
自暴自棄になって、お酒に溺れた日もある。
でも、誰かに体を委ねることだけはしなかった。
そうすることは
誰かに髪を触れられることになる。
それだけは、どうしても嫌で。
『俺が忘れさせてあげるよ。』
なんて吐き気のする甘い言葉を、ずっと拒み続けてた。
…わかってる。
もう、あたしの頭を撫でてくれる人は居ない。
唯一の自慢であるこの髪を褒めてくれる灯吾は、もう。
あれから美貴には会ってない。
大学の学食でも、ばったり会いそうな場所でも、美貴には会わなかった。
多分、美貴はあたしを避けてるんだろう。
それはあたしも同じだった。
そして風の噂で、美貴は毎日灯吾の病院へ行ってると聞いた。
相変わらず胸は痛むけど
そんな痛みさえ麻痺した頃。
一通の手紙があたしに届いた。