―White Memory―


そう思ったら、やっぱり涙は溢れて止まらなくて。

ぐすっと鼻をすすり、手のひらで涙を拭うと灯吾は優しい顔のまま問い掛けて来た。



「どうして泣くの?」

躊躇いがちに、灯吾の指先があたしの頬に触れる。


それがあまりに温かくて
想いがとめどなく溢れ出してくる。



「……灯吾、」

「うん。」

「あたしのこと……好き?」


泣きながらそう聞くと
涙を拭くあたしの手を取って、空いた逆の手で髪を撫でた。

記憶を失す前の頃のように。




「――好きだよ。」



あたしの不安は
その一言で洗われてしまう。


だけど、もっと
もっとあたしに言葉をちょうだい。

もう、不安になんか負けないくらいに。




「…それは、恋人としての好き?」

「うん。」

「……記憶がなくても?」

「うん。」


だってね、と灯吾はあたしの手を口元に移し、優しく唇を寄せて言った。



「聖華さんに会えないと、何だかすごく悲しくて、すごく辛いんだ。」





< 43 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop