―White Memory―
そう思ったら、やっぱり涙は溢れて止まらなくて。
ぐすっと鼻をすすり、手のひらで涙を拭うと灯吾は優しい顔のまま問い掛けて来た。
「どうして泣くの?」
躊躇いがちに、灯吾の指先があたしの頬に触れる。
それがあまりに温かくて
想いがとめどなく溢れ出してくる。
「……灯吾、」
「うん。」
「あたしのこと……好き?」
泣きながらそう聞くと
涙を拭くあたしの手を取って、空いた逆の手で髪を撫でた。
記憶を失す前の頃のように。
「――好きだよ。」
あたしの不安は
その一言で洗われてしまう。
だけど、もっと
もっとあたしに言葉をちょうだい。
もう、不安になんか負けないくらいに。
「…それは、恋人としての好き?」
「うん。」
「……記憶がなくても?」
「うん。」
だってね、と灯吾はあたしの手を口元に移し、優しく唇を寄せて言った。
「聖華さんに会えないと、何だかすごく悲しくて、すごく辛いんだ。」