―White Memory―
「ここ?」
「うん、そうだよ。」
そして、クリスマス。
あたしたちは
二人きりで初めて話したあのゲレンデを訪ねた。
キラキラ光る雪景色に、何だか胸がいっぱいになる。
灯吾と出会って4度目の冬。
3年越しのゲレンデは
変わらない姿で、パウダースノーを照らしていた。
「…卒業したら、少し会えなくなるね。」
ふいに呟いたあたしに、灯吾は「そうだね」と答える。
そう、大学を卒業したら
広告代理店に就職が決定してるあたし。
灯吾はあの入院期間で単位を落とし、一年留年することになった。
今までみたいに、頻繁に会うことは出来なくなるだろう。
そこで押し黙ってしまったあたしを、灯吾は目を細めて優しく見つめてくる。
「…何よ。何見てるの?」
唇を尖らせ、むくれるあたしに灯吾は笑ったまま首を横に振った。
そしておもむろにあたしを引き寄せて言う。
「俺、聖華の家に住もうかな。」