―White Memory―
やっとこれが現実だと理解出来たのは、ICUに閉じ込められた傷だらけの灯吾を目の当たりにした時だった。
「―――嘘…、」
だけど、あたしはその事実をすぐに受け止められなかった。
嘘だ、こんなの。
こんなの、夢に決まってる。
頼りなく脈打つ心電図が、あたしの視界を埋め尽くす。
ピ…ッ、ピ…ッ、と規則正しい音を聞きながら、あたしは震える足で灯吾へ近づいていった。
「……灯吾、」
呼び掛けても
当たり前のように返事はない。
深く瞼を下ろして眠る灯吾の頬を、ゆっくりと撫でてみた。
痛々しい、傷痕。
何も映さない、灯吾の閉ざされた瞳。
ずっと、ずっと
誰よりも傍に居たのに。
――あたしはここに居るのに。
「何で……っ!」
崩れ落ちたあたしを、傍に居たお母さんがすかさず支えてくれる。
だけどあたしは立っていられなかった。
まるで足元をすくわれたみたいに力が入らなくて。
涙に濡れた視界は、ベッドに投げ出された包帯だらけの灯吾の腕を歪ませた。