白波リズム
匂い
今まで意識しなかった匂い。


それなのに、意識した途端に気になって仕方なくなる。




…あ、ほらまた…。


「おはよー!!」


振り返らなくても、分かる。


だって、今も漂うノリの匂い。


「おはよ。」

わざとそっけなく返すのは、溢れ出す想いを隠すため。



「何?何か怒ってんの?」

眉間にシワを寄せるのは、気を抜くと顔が緩んじゃうのを防ぐため。



「べっつにー。それより、急いでるみたいだけど、次の授業休講らしいよ。」


「え!!マジ!?」


「うん、マジ。」



「うわー、家からチャリ飛ばしてきたのにー!!」


ノリはうなだれた。



「マジ、ただのバカでしょー!!」



「マジでショックだー。」


そんなノリを見て笑う。




「ところで、沙羅さん、次の時間暇?」

真面目な顔で、私を見つめる。



「え…?何で?」


じっと見られると、ドキッとしてしまう。




「財布忘れてきちゃったー。学食よろしくー!!」


ヘラヘラとヤツが笑う。



「は!?…このバカッ!!」


何だよ、学食かよー!!


あのドキドキを返せ!!




「バカとは何だよー。俺は腹が減って動けないんだよー。」



「もー分かったよ。」



「ありがとうー!!沙羅さん大好きー!!」


そう言って抱きついてきた。


「このバカ!!離れろっ!!」


冗談でもドキドキするでしょー!!



でも幸せ…。



そう思う私の他がバカだ。
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