心の距離

嫉妬

彼女と挨拶すらしないまま週末を迎えてしまい、ため息ばかりの土曜日。

…彼女を夢の中だけの存在にしたいのは自分なのに、全部自分の責任なのにすげぇ辛い…

新しい家に置く為の家具と布団を買い、考えながら店内をフラフラしていた。

視界に飛び込んだ、黄色いひよこのタオルケット。

彼女へのお詫びも兼ねて、タオルケットを買っている自分が居た。

…夢の中だけの存在なら、お詫びとか必要無いだろ?何してんだよ俺…

ラッピングを待っている最中、頭の中で自分を責め続け、新しい家に向かった。

たった一人で引越し作業を続けるのは、虚しく、寂し過ぎた。

虚しいと思う度に彼女が頭に浮かび上がり、寂しいと思う度に彼女が恋しくなる。

…家電は来週だからこんなもんか…

一段落した後、すぐに車に乗り込み、朝日の見える海に向かった。

朝日の昇りきった海に着くと、波の音と共に、子供達の楽しそうな声が耳に飛び込んだ。

シーズン真っ直中の海は、人で溢れている。

何処から見ても孤独な男が、こんな所に居るのは場違い過ぎる。

楽しそうな声から逃げるように車に乗り込み、波の音から逃げ出すように、実家へ帰宅する始末。

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