心の距離
心の距離
帰宅し、軽くシャワーを浴びた後、会社に行き、事務所に入ると、ヒデは社長に頭を下げていた。

ヒデの処分は1日の謹慎と減給だけに止どまったが、僕とヒデは口を聞かなかった。

彼女に携帯の番号も教えないまま、平和で罪悪感ばかりが膨らむ1日が過ぎて行った。

彼女とヒデに離れてしまう事も隠したまま、時間が過ぎてしまい、行われた金曜の送別会。

ヒデと彼女には『春樹さんと洋介の送別会』と伝えていたらしいが、本当はそこに僕も入る。

彼女は離れた場所で春樹さんと明るく話していたが、僕はヒデと肩を並べて沈んでいた。

「…お前も行くんだろ?」

真直ぐ前を向きながら小さく聞いてくるヒデ。

グラスを口に付けながら、小さく聞き返した。

「ああ。聞いたのか?」

「いや、勘だよ。春樹さんと洋介が行って、お前が行かないのはおかしいからな」

「流石だな」

小さく笑いながらタバコに火を点け、ため息混じりに煙を吐き出すと、ヒデがタバコに火を点けた後聞いてきた。

「いつからだった?あの子の事」

「パチ屋に居た時から。スロット打たなかったのも、無駄にのど飴食ってたのも、全部あの子に近付く為」

「ヤベ…すんげぇ殴りたい」

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