心の距離
小さく笑いながらビールを一口飲むと、ヒデがため息混じりに告げてきた。

「あの子の目見て話せないクセに…親友として忠告。独り善がりになるなよ?」

「もう遅ぇよ…つうか、梨恵どうした?」

「ありゃ頭おかしいよ。3年以上付き合えば、慰謝料請求出来るから、それまで待てだと。誰が待つかよな?」

「狂ってるな。そういえば、江川さんと梨恵って、友達なのに店に行って良いのか?」

「内緒にしてたらしい。友達って事マネージャーにバレて、クビになってたよ。あの店、年内で潰れるらしいぞ?ことミンが辞めてから、売上ガタ落ちしたんだと。経営難で、会長が自己破産申請するらしい」

「大島さん情報か?」

「ああ。あの人も、この辺ですれ違う程度だよ」

「夢から覚める準備か…」

小さく呟いた後、耳に飛び込んだ彼女達の笑い声。

…何かバカにされてる気分。まぁいっか。明日には夢から覚めてるんだし、長い夢だったと思えば良いよな…

騒がし過ぎる店内で、静かにヒデと会話をし続けた。

「よし!二次会行くぞ!」

社長の声が耳に飛び込んだが、彼女は母親と家に向かい、僕は春樹さんの家に向かった。
< 130 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop