心の距離
剥したポスターを丸めているドジな姿を見た彼女に歩み寄り、通り過ぎる直前、僕の存在に全く気付いて居ない彼女の耳元で囁くように告げた。

「こんばんわ」

本当なら、夢の中のように抱き締めたい。

けど、今の自分に出来る精一杯の行動は、彼女の近くで挨拶をする程度。

店の中に入る直前、彼女の顔を見ると、彼女は真っ赤な顔をしながらニッコリと笑いかけてきた。

確かに話をしたいけど、大島さんのように厚かましくも無ければ、大島さんのように彼女と親しくもない。

焦って話しかけ、彼女を困らせるよりも、ゆっくりと時間をかけ、夢の中のように笑顔で話せる仲になれたら良い。

彼女の笑顔を横目で眺めながら改めて思った。

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