心の距離
簡単にシャワーを浴びた後、軍資金の3万を財布に入れ、桜の花が舞い散る中、ヒデの居る小さなパチンコ店に向かった。

騒がし過ぎる店に入ると、鼻の下だけに髭を生やし、茶髪でパーマを当てた、もうすぐ還暦とは思えない格好をしている、常連の大島さんが話しかけてきた。

「よう」

「こんばんわ。調子どうですか?」

「全然ダメ。暇つぶしに来てるだけだから良いけどな。また相方の彼女が居ない時飯行こうや」

「はい」

小さく返事をすると、大島さんは出勤してきた遅番のバイトの小さな群れに歩み寄って行った。

いつも見て居る遅番のバイトの群れに、見慣れない顔の女性が一人。

長く黒い髪を揺らし、大島さんと話しながら笑っている彼女。

バイトは4人しか居ないせいか、全員の顔と名前が一致するが、彼女だけは名前も知らず、顔を見るのもはじめて。

はじめて見る顔なのに、研修服を着ていない彼女に、違和感を覚えた。

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