心の距離
黙ったままうつむき、小さく体を震わせる江川さんを尻目に、苛立ちながら家に向かった。
最後の望みを失った事実。
鳴らない電話の理由を知った苛立ちは、家に近付く毎に虚しさに変わり、家に着いた時には、ただ呆然とする事しか出来無かった。
家のリビングに入ると、母さんが小さな真っ白い子猫を抱いていた。
「…それどうしたの?」
「昨日言ったじゃない。飼い猫が子供産んで困ってたから、春樹くんから子猫貰うって」
「…全然聞いて無かった」
「最近おかしいって春樹くんが心配してたわよ?仕事中も上の空だし、話しかけても反応しないし。怪我してからじゃ遅いんだから…」
「わかった。わかったよ!仕事中は集中するよ!つうかその猫、名前無いの?」
母さんの小言を遮り、話を逸らした。
「あるわよ。ことちゃん」
「…こと…ちゃん?」
「そう。琴ちゃん。三味線くんの方が良かった?」
「三味線って…どっちでも良いよ…」
ため息をつきながら部屋に入り、鳴らない電話をテーブルの上に置いた。
最後の望みを失った事実。
鳴らない電話の理由を知った苛立ちは、家に近付く毎に虚しさに変わり、家に着いた時には、ただ呆然とする事しか出来無かった。
家のリビングに入ると、母さんが小さな真っ白い子猫を抱いていた。
「…それどうしたの?」
「昨日言ったじゃない。飼い猫が子供産んで困ってたから、春樹くんから子猫貰うって」
「…全然聞いて無かった」
「最近おかしいって春樹くんが心配してたわよ?仕事中も上の空だし、話しかけても反応しないし。怪我してからじゃ遅いんだから…」
「わかった。わかったよ!仕事中は集中するよ!つうかその猫、名前無いの?」
母さんの小言を遮り、話を逸らした。
「あるわよ。ことちゃん」
「…こと…ちゃん?」
「そう。琴ちゃん。三味線くんの方が良かった?」
「三味線って…どっちでも良いよ…」
ため息をつきながら部屋に入り、鳴らない電話をテーブルの上に置いた。