心の距離
「瞬、彼女と知り合いなのか?」

「はい…彼女、昔通ってたパチンコ屋の元店員なんです」

「へぇ…あんな真面目そうな顔してるのに…パチ屋の店員って軽いって言うけど、意外と軽いのかな?」

「軽くなんか無いですよ。堅過ぎる位です。常連のオッさんが、1年近く携帯の番号聞き出そうとしてたらしいですけど、結局教えないまま辞めたらしいですし…食事だって、無理矢理連れて行かれて、結局食べないで帰ったし…」

「惚れてるのか?」

「ち、違います!前に彼女のお陰で10万勝ちしたお礼がしたいだけです!」

「嘘が下手だな。その時の話、ヒデから聞いたけど、普通ならそんな事忘れてるよ。彼女も忘れてるんじゃないか?さっきだって初対面みたいな顔してたろ?」

何も言い返す言葉が無く、黙ったままため息をついた。

「覚えてるかどうか、確認する価値はあるかもな。ほら、報告書。彼女に渡して来い。これが無いと、彼女帰れないぞ。先に帰るから、戸締まりして行ってな」

報告書を渡した後、春樹さんはさっさと帰ってしまい、会社の中には彼女と二人きり。

なんて事は無い、いつもと同じ行動なのに、いつも以上に緊張している自分が居た。

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