心の距離
突然聞かされた、社長の移動命令に、ヒデが聞き返した。

「何で俺ら3人なんですか?」

「他に居ないから」

「決められないって言うのは?」

「瞬はズバ抜けた技術があるけど社交性が無いだろ?洋介は社交性があるけどズバ抜けた技術が無い。ヒデに行かせようと思ったけど、あの彼女じゃなぁ?毎日クレームの電話かけて着そうで怖いよな…春までに別れるつもりなら行って貰うけど…」

「別れられないでしょうね…」

「だろ?ことみちゃんみたいな彼女だったらなぁ…男の背中押すんだろうけど…」

「ことみちゃんが彼女だったら、二人で移動しますよ」

「社内恋愛は禁止だぞ?」

「そうなんですか!?マジかよ…ことみちゃん、口説こうと思ってたのに…」

――!!?――

ヒデと社長の言葉に、驚きのあまり息が詰まった。

予想打にしなかったヒデの気持ちと、今まで知らなかった会社のルール。

今まで居た事務員は年配の既婚者ばかりだったから、言わなかったのだろうけど、今は独身の若い女性。

…夕べ言ってた『辛くなる』ってこの事だったのか?こんなの、ことみちゃんがパチ屋で働いてた時と同じじゃん!マジで最悪だ…
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