Hurly-Burly 【完】

あの悪魔を引っ叩いたのは今も前もあの一回

だけだったと思う。

「その日に抱えきれないほどのキャンディーを

あげた。それで我慢しろと言うしかなくてさ。

さすがに小学生だったから煙草買えなくて、

その代わりにって言ったら思いつくのが幼稚

だけどキャンディーだった。」

寂しくなったらキャンディーを送ろう。

「その日から煙草は絶対に吸わなくなった

よーな気がするんだよね。」

今はどうか分からないけどね。

時々、吸ってるかもしれない。

それでも、前より依存してなければいい。

「あたしの前だけでも煙草は吸わなくなった。」

煙草に塗れる彼を見た瞬間あたしはどうしようも

ないぐらい可哀想だと思った。

「ヒヨリン・・・」

ナル君がぎゅっとあたしを見つめる。

「変な話をして悪かったね。

けど、伊織君はそうでもないみたいだから

ほどほどにね。」

クスクス笑う。

今も覚えてるんだ。

そのキャンディーを受け取った彼の顔。

「もし止められなくて困ったらあたしが

ケータイも煙草も壊してあげるよ?」

きっと、そんな日は来ないかもしれない。

「そんな日がもし来たら頼むかもなー。」

ヘラリと笑う伊織君。

「つうか、どんだけの怪力だよっ。

小学生の頃からってのにビビったわ。」

慶詩が小突いて来る。

だって、その時はイラっとしたからな。

あたしにばっかり意地悪するんだ。

「本当は少し頭を冷やせと氷水をぶっかける

つもりだった。」

サユと一緒に氷をたくさん買ったっけ?

投げつけてやるのもいいねってサユと

言ってたような気もする。

< 202 / 419 >

この作品をシェア

pagetop