Hurly-Burly 【完】

佐藤君の表情は少し頼りない。

まぁ、ビビるのも無理はない。

明香里ちゃんがタクシーから降りて

入って行った店はとてもじゃないけど

いい雰囲気ではなかった。

あたしと佐藤君はコソコソしながら、

その店に徐々に近づいた。

制服だし、入れてもらえるかは分からない。

「佐藤君、やっぱり警察とかに行った

方がいいのかな?」

あたしたちが行ってもいいのだろうか?

「でも、間に合わなかったら・・・

桑田さん、気分も悪そうだったし。

急いだ方が良さそうだよ。」

そうだよね。

一刻も早くした方が良いよね。

それでも、あたしと佐藤君は中々

その店に踏み出せずに居た。

ビビっていたわけでは・・・

「知ってたか、あの馬券場・・絶対

当たり出さねぇらしいぜ。

インチキとはったりで出来てるってよ。」

そんなとこで油売ってる場合があるなら

真面に働け!!

「俺は、あのナース服の姉ちゃんがいる店

なんつったっけな?

随分、金絞られたな。」

色気に負けたあんたが悪いよ。

とにかく、何故あの店に入る奴らは

ガラの悪そうなのばかりなんだ。

ちょっと、ばかり免疫はついたものの、

みんなとは比にならないほどのガラの悪さ。

「・・・行きづらいね。」

佐藤君もビビるほどって随分だ。

何かと無自覚男なのに、佐藤君こういうの

は駄目なのかもしれない。

そう考えると、今しっかりせねばならない

のはあたしじゃんと思って頬を一発殴った。

女は愛嬌と度胸よ。

いつか、母さんの言ってた言葉を思い出す。
< 261 / 419 >

この作品をシェア

pagetop