Hurly-Burly 【完】

そして、教室に残るわずかな不良らしき

雰囲気の人たちが左隣りの彼を気に掛ける。

「立花さん、プリントまとめるだけだから。」

それから数分後に悪魔の貴公子は女子生徒が

たったあたしだけというのに極上の微笑み

を振りまいた。

「はい。」

机には大量のプリントに囲まれ埋もれるあたし。

だ、誰かお助けを・・・

プリントの下敷きになって死ぬのは

さすがに嫌だよ。

「先生、ちょっと用事出来てな。

さっきの訂正な。

一人で片付けてくれるかな。」

畜生。

元々、一人でやらせるつもりだったんだろう?

このあたしを騙そうなんて100年早いわ。

「ええ、もちろんですよ。

これぐらい一人で片付けられますわ。」

ムカつくから絶対この悪魔が狙って

いたであろう言葉を言うことはなかった。

「素直になれよ。」

耳に近付けると悪魔が囁いた。

ゾッとするぐらい色っぽく。

気持ち悪さと心臓の逆鱗に

触れたせいか動悸と眩暈と

激しい頭痛に襲われた。

キッと睨みながらプリントを

机に激しく叩きつけるように置いた。

そして、わざとらしく思いっきり

最高に完璧な作り笑いを浮かべて、

「手を借りずとも出来ると言っているのです。」

ホッチキスに手を伸ばして、

彼を無視するように一人作業を続けた。

自分でやるって決めたことは絶対

曲げたくない。

誰かに手を借りたいと思ったことは

殆どない。

何もかも自分で出来るように努力した。

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