僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「つーか、親父が来るだけで何がそんなに嫌なんだよ」
「あ、ありがとー。……何がって、嫌なもんは嫌なんだよ」
マグカップをテーブルに置くと、それぞれが手を伸ばす。
……凪が憂鬱だって言ってたのは、お父さんが来ることだったのか。
ほんの僅かな沈黙は、祠稀がマグカップを置いたことで壊される。
「サヤと会ってんのがバレるから?」
凪はココアを飲んだまま祠稀を見つめ、彗は目を伏せていた。
いきなり突っ込みすぎだと思ったけど、あたしは黙る。
……そうだ。もう遠慮はしないと、決めたんだから。
「ああ、そっか。あたしが昨日何してたか、知ってるんだっけ」
凪はマグカップを置いて苦笑する。それが祠稀には気に食わなかったのか、多分嫉妬だろうけど、眉を寄せた。
「別れろよ」
「や、付き合ってないし」
「じゃあもう会うな」
「……祠稀」
そう呟くと祠稀はあたしのほうを向いて、凪を指差した。
「有須も黙ってねーで、言え! あんだろ言いたいこと!」
「え、え!? あたし!?」
「そーだよ!」
お、横暴だ……。
でも、きっとあたしひとりじゃ、凪にやめてほしいなんて言えなかった。
ちらりと凪を見ると、怒ってるでもなく、あたしの言葉を待ってるようだった。
「……あたしも、サヤさんとの関係は……よくないと思う」
「ほらみろ。だいたい不倫なんて、未来ねぇだろーが。お前、2番目ってことだぞ。1番になんて、一生なれねぇんだよ」
歯に衣を着せない物言いに冷や汗が出たけれど、否定はできそうにない。
あのサヤさんの話を聞く限り、この先凪が幸せになれるなんて、到底無理に感じる。