僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「何じゃねーよ。何むつけてんだって聞いてんだろーが」

「はー!? 知ってるくせに! 聞いたんでしょ!」


え。もしかして、サヤさんに会ってきたこと、もうバレてる?


「……なんのこと?」

「パパが、ウチに来るじゃん。来なくていいっつーの」

「あ? ……ああ」

そ、そのことか。


「有須、沸いた」

「あ、はいっ!」


拭いたマグカップを並べると、彗がココアを注ぐ。その間にも凪の「もー最悪!」という叫びを聞きながら、あたしは彗のマグカップに珈琲豆の粉末を入れて、お湯を注いだ。


「……俺、有須が淹れてくれた珈琲好き」

「え?」


彗が微笑んでくるから、さっと目を逸らす。顔が赤くならないようにコントロールするなんて、あたしには無理だ。


「あは、や、やだな。お湯注ぐだけなのに」

「……うん。でも、好き」


ドキン、と胸が高鳴る。こんなの、なんてことない会話だ。そう思うのに、顔が熱い。胸が苦しくて、泣きたくなる。


……好きだと、言いたい。


「……嬉しいっ、ありがとう」


溢れそうになる想いを我慢して、パッと顔を上げる。


なんてことない。今好きだと言ってもどうにもならないことは分かってるし、好きだと告白できるほど、あたしは何も頑張ってない。


「持ってこっか」

「……うん。2つずつね」


彗が自分と凪のマグカップを持ったくらいで、哀しくなることなんてない。


あたしはいつかちゃんと、胸を張って彗に好きだと言うんだ。
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