僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


グンッと腕を引っ張られて、気付けば“そこ”は何より安らぐ場所だった。


「……な、に……ちょっと……サヤ……」


言葉の代わりに強く抱き締められて、涙が溢れる。せっかく我慢したのに、親バカのせいで台無しだ。


だけど愛しさが込み上げて、抱き締め返さずにはいられなかった。



――神様。お願いです。


今この瞬間だけは、この世界にふたりだけだと思わせてください。


心の中だけでいいから、愛してると言わせて。



呼吸も鼓動も体温も感じる、隙間なんてないくらいの距離を永遠に保っていたかった。


もう離してというように体を後ろへ引くと、サヤの腕が緩んだ。


「ほら、ふたろとも家出る時間でしょ」


赤くなってるであろう鼻を片手で隠しながら言うと、緑夏ちゃんが「あ!」と気付く。


サヤを見上げると、形容しがたい表情であたしの顔を見ていた。


「……サヤも。急いで、もう時間過ぎてるよ」

「うん、凪……旭さんに似てきたね」

「……そう? なら、嬉しいよ」


微笑むと、お母さんに似てきたらしいあたしの頭を撫でて、サヤと緑夏ちゃんは会社に行く準備を始めた。




「戸締りちゃんとするんだよ。それから知らない人が来ても出ちゃダメ」

「分かった分かった」


玄関先でふたりを見送るあたしに、サヤはいつものように毎回同じことを言う。


「あと春休みだからって、夜遅くまで遊ばないようにね!」

「はいはい」

「ホントに分かってる!?」

「分かってますー」


体の後ろに手を回し、脚も交差させながら言うあたしは誰が見ても適当に返事しているはず。


そんなあたしにサヤは不満げな顔をしつつ、緑夏ちゃんに「心配」と漏らしてる。


当たり前に緑夏ちゃんはくすくす笑って、ドアノブに手をかけた。
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