僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「最初に聞いときたいことあんだけど」
ちょうどいい熱さのココアを飲んだら気分が少し落ち付いた。
彗はマグカップの縁を口に付けたまま、視線は俺に向けて質問を待っている。
「あの金って何?」
意識したことはないけど実際、凪は社長の娘だ。
「親にもらったにしても、貯金からおろしたにしても、バカにし過ぎだろ」
手紙と一緒に置いていかれた金はまるで、これで家を出るのを許してほしいと言われてるようで胸糞悪い。
「……俺らのお金だと思うよ」
コトン、とマグカップを置く音と被ったせいで聞き間違いかと思った。
「は?」
「多分だけど……。あれ、100万以上あると思う?」
「……どう見てもあるだろ」
「じゃあやっぱり俺らのだと思う。……元はね」
元? 元は俺らの金って……。
意味が分からないという顔をすると、彗はポツリと「5×8×3」と付け足す。
そう言われた瞬間なんの金かは分かったけど、その行為の意味が分からなくなった。
「なんで凪が持ってんだよ! つうか返されたってっ……意味分かんねぇ……」
凪が置いてった金は全部で120万あるということで、それは俺たち3人が8ヶ月間で払った家賃の合計だ。
「……家賃なんて必要ないんだよ。本当は食費とか光熱費だけでよかったんだろうね」
言葉が出ずに黙っていると、彗の口調に違和感を覚える。
「この家はきっと、颯輔さんが買ってたんだ。俺たちが払ってた家賃は、形だけってことになる」
外していた視線を向けると、彗も俺を見て微笑んだ。なんとも言えない、諦めるしかないというような苦い笑い方。
「……さすがに知らなかったよ」
バカだと思った。
彗にこんな顔をさせる凪を、心の底からバカだと思った。だけど彗は平気そうに、きっと無理して笑ったから、ここで凪に暴言を吐くのはやめる。
そんなもんは直接会って、言ってやればいい。