僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……凪と同じくらい、愛すよ」
僅かに目を見開いた凪はすぐ、颯輔さんの言葉を噛み締めてから微笑む。心の奥底に鍵をかけて、受け入れるように。
「……新しい家族ができるって、嬉しくて。凪と彗は同い年だから……妹か弟を作ってあげられることが嬉しくて……。俺は会社経営があるし、緑夏は……数年育児休暇は取るけど、また仕事はしたいって……」
「……うん、それで?」
途切れ途切れに話す颯輔さんに、凪はやっぱり優しく声をかける。
「いつか……凪が高校卒業したら……5人で住みたいと思ってる」
5人という言葉に反応したのは凪だけじゃなく、彗もだった。
俺も有須と顔を合わせようとしたけど、思い留まる。颯輔さんが語る未来図は、きっと、凪も望むことだとわかるから。
「俺たちが仕事で遅くなっちゃう時は、凪と彗が世話してくれるかなって……ふたりが遅くなる時は、緑夏とあの子が出迎えるんだろうなって……。休日は、5人そろって出かけたりしたいなって……そう、考えることが多くて。……そのたび、幸せだって、思う……」
幸せだろう、きっと。
そういう未来が来るために、娘に戻るために、凪は家を出たんだから。
「俺がそういう幸せを知ってるのも、そんな風に想像がつくのも……凪がいたからだよ。ふたりで過ごした時間が、思い出があるから、今の俺があるんだ」
「――…」
凪はじっと颯輔さんを見つめていた瞳を床に向け、困ったように笑った。
その心中は、想像もできない。
「……うん。じゃあ、やっぱり緑夏ちゃんには、無事に産んでもらうしかないね」
溜め息混じりに笑みを零す凪は、前髪を横にすきながら顔を上げた。その瞳にうっすら滲む涙は、何?
「そういう未来が来るなら、大歓迎。あたしは3歳の時に引き取られたから、赤ちゃんの扱いを知らないサヤは大変だね」
……終わり?
これで? これでもう、凪と颯輔さんは向き合って、話したことになるのか?
「でも、サヤなら大丈夫。いっぱい勉強して、いっぱい愛情込めて、育ててあげてね」
腑に落ちない。そう思いながらふと彗を見ると、彗もまた、苦しげな表情で凪を見ていた。
すると、彗は何かを噛みしめるように、痛みを我慢するように俯いて、凪から視線を逸らしてしまう。