僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「サヤ、あたしね――…」
「っやめて!」
凪の声に被せるように、緑夏ちゃんの声が病室に響く。俺も、彗も有須も驚いて、もちろん、颯輔さんも目を見張っていた。
「……あ……」
自分でも意識して言ったわけじゃないのか、一斉に視線を向けられた緑夏さんは口元を手で隠す。
……気付いてる? 凪が持つ、颯輔さんへの想い……。
だったらなんで止めるんだと、黙ってろと、思わないわけじゃなかった。
だけどそれは俺たちが凪側に付いてるからで、緑夏さん側からすればいい迷惑なのかもしれない。
でも、やっぱり、俺は――…。
緑夏さんを凝視していた俺は、凪に視線を移して余計困惑した。
想いを告げようとして、憎いと言っていた緑夏さんに妨げられたはずの凪が、微笑んでいたから。
まるで、それでいいと、言ってるように。
「……産みたいんでしょう? サヤの子供」
「……」
「分かるでしょ、緑夏ちゃん。子供ができて、サヤがどれだけ喜んだか。産まれたら、どれだけ愛してくれるか。想像できるでしょ?」
落ち着いた、凪の優しい声を向けられるのは、緑夏さん以外の誰でもない。
自分に宿った命を確認するように、お腹に触れた緑夏さんは小さく頷く。
「だったら、あんなこと二度と言わないで」
グッと浮かんだ涙を堪えるように、緑夏さんは眉を寄せて震える唇を強く結んだ。
なんで……なんで、そうなるんだよ。それでいいのかよ、凪。それが本当に、お前の望むことなのかよ。
そんなの、産んでくれって言ってるのと同じじゃねぇか。
俺だって、堕ろしてほしいわけじゃないけど……じゃあどうするのが1番なのかって聞かれたって、答えられないけど。
でも、なあ。凪。
「……ねぇ、サヤ。そうでしょ? いっぱい愛情込めて、育てるんでしょ?」
こんなのは、あんまりだ。
「楽しみでしょうがないんでしょ? 幸せなんでしょう?」
なんでだよ、凪。
どうして言わない。
なんで想いを伝えないんだよ……!
悔しい、悲しい。そんな言葉じゃ足りないくらいの感情が、胸の奥で渦巻く。
――また、繰り返すのか。
緑夏さんと真剣に付き合ってると言われた時と、同じことを。