僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……なぁ、凪。つまりそれって苦手なんじゃなくて、流されそうで怖いとかそういうことじゃねぇ?」
「――…」
表情が固まった凪に、少しの期待が芽生えた。
「へー……なるほどね。人の意見を全く聞かなかった凪がねぇ……ふーん」
にやにやと口の端を上げていると、段々と俯いていく凪。俺はテーブルに右肘をついて、左にいる凪の顔を覗こうとする。
「俺のことも、俺が言うことも、どうでもいいんじゃなかったっけ?」
凪は思い切り俺を睨んできて、だけど怖さなんて微塵もなかった。
ほんのり赤く染まった頬が、俺という存在を受け入れたんだと分かる。
「凪。お前、きっと……俺のこと意識し始めるよ」
目を丸くさせた凪に、なんてバカらしいことを言ったんだと自分でも思った。
未来を予言する力なんて俺にはないけど、そうなればいいと口にすることはできる。
願いを口にすると叶わないと思うより、口にするたび叶う確率が上がると思いたい。
「ていうか、もう意識してるだろ」
誘導尋問とか催眠術とか、そんな類のものに近そうだけど。言い返す言葉が見つからなさそうな凪に手ごたえを感じるから、暫くはこれでいこうか。
「祠稀のその性格、ほんと嫌……!」
「うっかり、そうかもって思うから?」
「意識とかしてないんだけど!?」
バカじゃないかと言いたげな凪に俺は口の端を上げるだけで、そんな俺を見て凪は唇を結ぶ。
……もっと言い返せばいいのに。そしたら俺はもっと、攻められる。
まあ、あんまり関係ねぇか。
いつまでも颯輔さんの影をチラつかされて、黙ってられるほどできた男でもないし。
だからって颯輔さんをさっさと忘れろなんて言いたくもないし。
俺に与えられた時間は短いのか長いのか、明日も来るのか来ないのか。
知らないから、とりあえず、伝えたくなったら口に出そうと思う。
「……ごちそーさま」
次は何を言われるんだと構えていた凪が、「は?」と間抜けな声を出したけど、気にせずマグカップを持って腰を上げた。
「俺は歯ぁ磨いて、寝る」
残っていたココアを一気に飲み干すと、凪は意味が分からないという顔で見上げてくる。