僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……なんなの」
「凪も、もう寝ろよ。どーせ宿題やってないんだろ。明日からやんないと間に合わねぇぞ」
「宿題とかどうでもいいし……」
ぶつくさ文句を言いながら立ち上がった凪の背中を見て、持っていたマグカップをテーブルに置いた。
ドアの取っ手に手をかけた凪の後ろから、それを妨げる。
取っ手の上で重なったふたりの手が妙に気分を高揚させたから、俺を見上げようと振り返った凪に、顔を近付けた。
「……」
部屋は明るいのに、お互いの鼻先が触れそうなほど近付いた距離は、凪の顔に影を落とす。
長い睫毛に縁取られた目が大きく見開かれ、そこに俺が映し出されていた。
「……やめた」
言いながら離れない俺に、凪はハッと我に返ったようで、固まっていた体の力を抜く。
そのまま信じられないほどゆっくりと、俺の口元に指先で触れたから、驚いた。
……凪?
身に覚えのある感覚を感じた瞬間、次に襲ったのは痛み。
「イッ! 何す……っイテェだろーが!!」
口と耳を押さえて勢いよく離れた俺に、凪は反省の色を見せるどころか笑顔を向けてきた。
「わざとじゃないよ?」
「嘘つけよ! お前、今、思いっきり引っ張っただろーが!!」
口と耳のピアスを繋ぐチェーンが揺れたと思ったら、あろうことか手前に引っ張りやがった! イテェ! 千切る気か!
痛がる俺なんかお構いなしに、凪はドアを開けて部屋を出る。すると凪は再び振り向いて、口を開いた。
「言っとくけど、あたし、手強いから!」
バタンッと荒々しく閉まったドア。開いた口は塞がらない。
……つーか、顔、赤かったけど……手強いって……は?
「……くっ! はは! 手強いって自分で言うか、ふつう!」
込み上げた笑いは暫く止まらなくて、おかしいのもあったけど、それ以上に嬉しく思った。
俺の好意を受けて立つとしか、聞こえなかったから。
「……はっ。上等だよ」
もう遠慮なんかしない。
高く、遠く、どこまでも広い空のような未来まで、共に歩んで行けるなら。
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