僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……泣かないでよ」
あたしまで、泣きたくなる。
サヤは緩く首を振って、唇を結ぶ。落ちた涙は一滴でも、サヤの瞳は乾かない潤いを帯びていた。
「まだ、言いたいこと……あるんだよ」
「うん……ちょっと……。ごめん」
あたしに握られてない手の袖で、サヤは自分の頬を大雑把に拭う。鼻をすすったサヤを見てから、あたしはもう一度口を開いた。
「あの、ね……」
伝えたいことは多くはないはずで。少なくもないけれど、言うことは決まっていた。
それでも言葉が途切れてしまうのは、ずっと、心の奥底に閉じ込めていたものだからかな。
「高校を卒業したらこの家に帰ってくるって、約束できない」
「――…」
やっぱり目を見張ったサヤに、胸が痛む。どうして?と言いたげな瞳に返せる言葉は、とても自分勝手かもしれない。
「帰ってきたくないって思ってるんじゃない。サヤが言ってた未来が、嫌だって言ってるわけじゃないの」
高校を卒業してこの家に彗と帰ってきて、家族を、大事にしてみたい。新しい妹か弟と、一緒に過ごしてみたい。
だけど――…。
「あたしはあの場所で、彗たちと住んで、いろんなことを知ったから。これからもっと、知りたいの。自分のことも、みんなのことも」
最初の約束通り、高校の3年間だけになるかもしれない。でも、何か見つけて、あの場所に住んでいたいって思うかもしれない。
もしかしたら、別の場所に行ってみたいって思うかもしれない。自分が進む道が、見つかるかもしれない。
「……卒業するまでって思いながら暮らすのは、嫌なの」
帰る家があるのは、待っててくれる家族がいるのは、幸せなこと。
だけど今度こそ本当に、頑張ってみたい。自立と言うには足りなくて、やりたいことも見つかってなくて、まだまだ未熟だけど。
「凪の居場所は……あそこなんだね」
やっと見つけた。
あたしが、凪でいられる場所。あたしを、凪にしてくれる人。