空をなくしたその先に
ダナがこの手を拒否するというのなら。

どうにかして、偽の旅券を手配することを考えなければいけないだろう。

大金を払えば作ってもらえるという話を聞いたことがないわけではないが、

あくまでも噂だし、冒険小説の中の作りごとだと思っている。

考え込んだディオの顔を、ダナはのぞきこんだ。


「ひょっとして……すごく困ってる?」

「すごくじゃないけど、困ってる。

僕一人なら、正規の旅券があるんだけど、君の分をどうにかしないとだから」


正規の旅券とはいえ、そこに記されているのは仮の名前だ。

無事に国に到着するまでの。

旅券が正式のものでありさえすれば、そこに記されている名前などただの記号で、意味はない。

出入国で止められることはないはずだ。
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