空をなくしたその先に
ふいにアナウンサーの声が止まった。

「……ここで臨時ニュースです。

本日午後、センティア王立研究所に武装集団が押し入りました。

現在研究所は炎上中。

所属研究員の生存は絶望的と見られています。

なお、逃走した武装集団の目的は不明。

政府は……」


ディオの頭からタオルが滑り落ちた。

センティアの王立研究所。

そこの研究員といえば彼の同級生や先輩の研究員、指導教授。

落ちたタオルを拾い上げようとディオは身をかがめるが、指が言うことをきかなかった。

タオル一枚拾い上げることなど、
それほど難しいことではないはずなのに。

がたがたと震える指先は、
大判のタオルをつかむことさえできないでいる。


「ディオ、どうかした?」


シャワーから出てきたダナは、ディオに視線を止めて凍りついた。


「……僕だけだ、ダナ……僕だけが生き残ってしまったんだ……」



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