空をなくしたその先に
『殿下。ご自分を大切になさいませ』

そうファイネルが忠告してきたのは、一昨日のことだったか。
ダナ相手に丁重な態度を崩さないでいても、

彼からすればどこの馬の骨かもわからない相手だ。

ディオが騙されているのではないかと、不安を感じたのかもしれない。

主が二人が同じ部屋で寝るのを認めていたとしても。

『大丈夫……彼女はただの護衛だから』

そうディオは返したのだった。
あの時のファイネルの不安そうな顔。

ディオの身を案じてくれているのはよくわかっていた。

ファイネルなりのやり方で。

フレディがダナを呼んだ。
一瞬、ダナの気がディオからそれる。

その隙をディオは見逃さなかった。
そろりとその場から身を引き、人混みに紛れ込んだ。


「ディオがいない!」


狼狽したダナの声を背に、ディオは走り始めた。

どこへなんてあてはない。

ただ、あの場から離れたい、それだけだった。

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