空をなくしたその先に
「お姉さんは?」

「子どもを一人残して、亡くなりました。

最初から姉がつりあう相手でないのはわかっていたのですけれど……

それでもやりきれませんわね。

相手の男は、子どもを養子に出してそれでおしまい」


吐き出される大きなため息。

首から下げられた真珠が、音をたてた。


「でも結婚生活はそれなりに幸せでしたのよ。

若い妻を夫はそれはそれは大切にしてくれましたもの。

愛してはいなかったけれど、尊敬はしていましたし」

「一つ聞いてもいい?」


ダナの好奇心が、投げかけてはいけないかもしれない問いを口にのぼらせる。


「旦那さんを殺した相手に復讐したって話は本当?」

「本当ですとも」


イレーヌは立ち上がりながら微笑んだ。


「噂の倍以上は苦しめたでしょうね。

彼が死ぬまでに一週間かかりましたもの。

……実際に、私も手をくだしましたのよ」

< 292 / 564 >

この作品をシェア

pagetop