空をなくしたその先に
どんな手段を使ったのかは口に出すことはなかった。


「私、執念深い性格ですの」


部屋の中を移動しながら、吐き出された言葉にダナはぞっとした。

執念深い性格と言うのなら。

彼女の姉を死に追いやったという相手の男性は、どんな復讐をされたというのだろうか。

一度離れたイレーヌは、すぐに戻ってきた。

両手にたくさんの本を抱えて。


「昔話はおしまい。
さ、お好きな本をどうぞ」


断ることなどできず、ダナは一番上の一冊を手に取った。

タイトルを見ることなく最初のページを開く。

開いてすぐに、それが王子と平民の娘の身分違いの恋を扱ったものであることに気づく。

ふとそれを自分ともう一人に重ね合わせて、ダナは苦笑いした。

彼にそんな感情なんて持っていない。

考えなければいけないのは、無事に国に帰りつくことだけ。

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