空をなくしたその先に
血液も皮膚も看護の手も。

自分にできるものは、何でも提供した。

空っぽの心を抱えたまま。

それでも。

どこかで憎いと思っていたのだろうか?

だからマグフィレットの王位継承者が、

危険な研究に手を染めているとライアンに告げられた時、笑って流すことができなかった。

一年かけてビクトールを観察し。

同じ期間を使って自分の部下をふるいにかけて、信頼する部下にだけアーティカを離れることを打ち明けた。

ビクトールを裏切ると最終的に決断したサラに、ライアンは身体を重ねることを要求した。

身体でつながらない女など信用できない、と。

要求されるままに抱かれた。

相手が誰だってかまわなかった。

ヘクターでないのなら、誰だって同じだ。

心を凍りつかせたサラには頓着せず、

ライアンは彼女のことを気に入ったようでリディアスベイルに入り浸っている。
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