空をなくしたその先に
今日も戦闘機に乗り込んでいたダナが、クーフに戻ってくる。
いつもの通り飛び降りたつもりが、よろめいて膝をついた。

下で見守っていたディオがあわてて手を差し出す。


「ねえ、あの兵器のこと何て呼んでいるの?」

差し出された手に素直に捕まって、ダナは立ち上がる。


「特に名前はつけていないよ。
もともとの研究とはずれたところから発生した代物だしね」


仲間内では雷神の剣と呼ばれていた。

放つ光があらゆるものを破壊するその様を、神の雷にたとえて。

今はそれがあまりにもおこがましいように思える。


「だいぶ慣れてきたわ。

そろそろ後ろに人を乗せてもいけるかも」


膝の土を払い落としながら、ダナはディオをうながした。

並んで歩きながら、ビクトールの家へと向かう。

ヘクターがいなくなった後、ダナはビクトールの家で暮らしているのだという。

ビクトールが留守にしている今、この家にいるのは二人だけだった。
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