空をなくしたその先に
「早く行きなさい。ダナ」


サラの口調が真剣なものになった。


「あなたは、思い出と添い遂げる必要はないのよ。

きっとヘクターだってそれを望んでいるはず。

だから行きなさい」


ダナの手が、胸元を押さえた。
分厚い飛行服の下、フレディから渡された指輪があるはずの場所を。


「あんたも思い出と添い遂げるには若すぎるだろうが」


上からふってきた声に、三人とも声の方を見上げた。

上空に救命艇が待機している。
そこから甲板にロープをたらして、背の高い男がすべりおりてきた。

黒い髪、日に焼けた肌。

上半身の衣服は身につけておらず、応急手当と思われる包帯が右肩に巻き付けられていた。

一瞬別の人間を連想して、ダナの目が見開かれる。


「地獄の悪魔にくれてやるのは、もったいなさすぎる。

悪いが一緒に来てもらうぞ」


そう言いながら、ライアンはサラの方へと歩んでいく。


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