空をなくしたその先に
「あなたにそんなことを言う権利なんてないわ!私たちはそんな関係……」


サラの台詞は、最後まで続けることはできなかった。

無造作ともいえる動きでライアンはサラの鳩尾に拳をたたき込み、崩れ落ちた体を、よろめきながら抱え上げる。

そのまま救命艇からおろしたロープに向かって歩き始めた。


「待ちなさいよ!」


ダナがわめいて、銃を抜いた。
サラを抱えたまま、彼はゆっくりとふりかえる。

銃口をまっすぐに彼に向けるダナに気づくと、静かな笑みをうかべた。


「俺を殺して連れ帰るか?」


正面から銃口に相対して、彼の視線はゆらぐことを知らない。
止めるべきなのか否なのか。

ディオが判断しかねているうちに、ダナは顔をゆがめた。


「約束しなさい。絶対に泣かせないって。幸せにするって」


ダナの言葉にライアンの笑みが、苦笑へと形をかえる。


「お嬢さんに言われるまでもないさ。

アーティカから引っ張りだした責任は取る」
< 472 / 564 >

この作品をシェア

pagetop