空をなくしたその先に
フレディは続く言葉を待った。


「ヘクターがいないなら、見せる相手もいないし」


それに、忘れたくなかったのだ。

あの日、どこかで自分はミスを犯した。

どこで過ちを犯したのか、何度振り返ってみても思い出せないけれど。

犯していなければ、今頃まだ二人そろって空を飛べていたはずだ。

だから消さない。
この傷は。

少なくとも今はまだ。


「女の子を拘束してってのも趣味じゃないしな。

やってみたら楽しいかもしれないけど、次回の楽しみに取っておくことにするよ」


言い訳のようにつぶやいて、フレディはベッドから滑り降りる。


床の上に降り立った時には、いつもの顔に戻っていた。


「ディオが来るか来ないか。

時間になったら待ち合わせ場所まで行ってみようじゃないか」
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